倉北ニュース

王者の風格!井上康生監督の講演に学んだこと

井上康生監督

校長 横山尚登

11月25日、本校創立55周年記念式典に引き続き2020年東京オリンピック男子柔道監督の井上康生氏の記念講演を開催しました。倉吉未来中心大ホールに来場の約1000人のみなさんも、今まさに世界の頂点を目指す戦いの最中にいるリーダーの話に、引き込まれるように聞き入っていらっしゃいました。

井上康生監督は2000年のシドニーオリンピック男子100kg級で金メダルを獲得、2012年のロンドンオリンピックで日本柔道が惨敗に終わった後に監督に就任、4年間で代表チームを立て直し、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは男子7階級全てでメダル獲得という空前の復活を成し遂げた監督です。
井上康生監督は講演の中でご自身の栄光に触れることなく、選手をいかに育てるかという指導理念を中心にお話しされました。私が特に心に残った言葉を紹介します。

監督は先ず、世界一を目指すには覚悟が必要だと言われました。そして、その覚悟は自分の人生観を深く掘り下げるところから生まれるとの言葉に、私は井上康生という人物のスケールの大きさを感じ、その後の話に引き込まれていきました。
今や柔道は世界のスポーツであり、100年後まで日本の柔道が生き残るために、今、日本代表として最強かつ最高の組織を作らなくてはいけない。そのためには上から押し付けるのではなく、選手や子供たちが内発的に自立するようにしなければならない。選手の資質として自己マネージメント能力が大事であり、まずは自分を知ることだ。ああしろ、こうしろと言ってもダメで、自分で考え行動できるようにする。本や新聞を読んだり、先生や親、先輩や友人の話を聞き、幅広い知識を身に着けることが大事だ。時には、選手のために企業経営者の講義を行ったりする。座禅を組んで自己を見つめる経験もさせる。何よりも人間力の向上を目指している。
一流と二流を分けるのは準備力だ。(本校のダンス部・合唱部の発表を、しっかりと準備され素晴らしかったとほめていただきました)準備段階ではネガティピスト(最悪の事態に備える)であれ、試合ではポジティピスト(実力発揮の確信)であれ。
指導者としては、明るい人や集団に福が来ると思うのでそのように心がける。変化する勇気と失敗する勇気を持ち、常に進化するという意識を継続しなければならない。慣例や通例は時に非常識ともなる。形式的になってはだめだ。過去の栄光や体験だけにすがってはならない。世界一の戦略家・戦術家でありたい。
柔道を通して世界50ヶ国を回り、グローバリズムとナショナリズムを学んだ。JUDOは世界の格闘技の集合体になりつつある。見たことのない技にも対抗しなければならない。日本人の勤勉さ、器用さ、創造性・柔軟性の高さなどは世界に誇れる。カナダのライバル選手から日本の柔道精神を学ぶこともある。イスラエルとパレスチナの交流柔道大会をやったこともある。2020年の東京オリンピックは勝った負けただけでなく、柔道の素晴らしさ、スポーツの素晴らしさを共有できるものとしたい。

私は井上康生監督の講演を通してリーダーシップを学ぶと同時に人としての在り方生き方を学ぶことができた思います。また、世界最強チームを率いる指導者の「王者の風格」を肌で感じました。